――2020年に20歳を迎えたJUNNAさん。今年1年を振り返ってみて、いかがでしたか。
「いつも1年が経つのはあっという間に感じるんですが、2020年はより一層、そう感じました。1月から3月までは普通にお仕事をしていたんですが、4月と5月は家で過ごすことが多かったこともあり、1年が短く感じましたね」
――19歳から20歳になる大事な時期ですし、コロナ禍での焦りもありましたか。
「そうですね。自分の気持ちとしても、周りから見ても大きなステップを踏む時期だと思うし、今年こそは色んなところで歌えたらいいなと思っていた年でもあったので。それが全部崩れ落ちちゃった感じはしたんですけど、でもコロナ禍になったことで、直接会えなくてもお客さんと関われる配信ライブという方法を見つけられたのは良かったんじゃないかなと思います」
――ちなみに自粛期間中に家でしていたことは?
「アルバム『20×20』に収録されている『いま』を作ったり。仕事じゃなかったら、ずっとゲームしてました(笑)。『あつ森』をしていたんですけど、ゲームの中はすごく平和な世界で、キャラクターが街を歩いているのを見て『いいな〜』って思ったりしていました」
――11月2日の無観客生配信ライブで「いま」を歌われていましたが、春の時点では、もちろんそこで初披露する予定など決まってなかったですよね。
「そうですね、アルバムに入ることすら決まってなくて、今後どうなるのかな、いつになったらライブができるのかなと思いながら作った曲なので。ただ、アルバムのリリースは決まっていたので、レコーディングなどの作業が6月の終わりくらいから7月頭にかけて、少しずつ始まっていきました。このアルバムは『いま』をレコーディングするところからスタートしたんです」
――そうだったんですね。アルバム『20×20』は、1曲1曲が個性的でJUNNAさんの多彩な表現力が響いてくる、本当に尊い今を詰め込んだような作品になっていると感じました。2年ぶりのアルバム制作は、どんな気持ちでスタートしましたか。
「最初、作る前にどういう曲が歌いたいかというのを全部伝えて。逆に『こういう曲を歌って欲しい』という意見もいただいて。『この方に(曲を)お願いしたいね』っていうパターンもあったし、色んな曲の中から私が歌いたい曲を選ぶというやり方もいいんじゃないかということで、デモ音源を聴いて選ばせてもらったり。歌詞も2020年の今だからこそ歌えるものがいいなと思っていました」
――前回のアルバム『17歳が美しいなんて、誰が言った。』では作詞家さんたちとJUNNAさんがお話をした上で作ったそうですが、今回はそういうやり方ではなく。今のJUNNAさんの等身大などは一度取っ払った上で、色んな楽曲に挑戦しているように感じました。
「そうですね。アルバム全体のテーマを設けたわけではなかったんですが、誰の心の中にも今の時代の状況があって、それを吹き飛ばしていきたい!というような、やっぱりみんな共通した想いが込められているなと思いました。サウンド的には今の自分よりちょっと大人っぽい曲や、歌ったことのないジャンルにも挑戦したアルバムに仕上がりました。いつも前作を超える新鮮で聴き応えのある作品を作りたいと思っているので」
――1曲目の「我は小説よりも奇なり」も、JUNNAさんの新たな代表曲になるようなエモーショナルでカッコいい仕上がりですね。
「この曲と『Sleepless』は私がたくさんの候補曲の中から選んだ曲なんです。直感的にカッコイイぞと思ったのと、ライブで盛り上がりそうだなと思って」
――後半の〈ぬかるんだ土に沈む夢〉のあたりがカオスな盛り上がりで、これはビートとメロディがズレてるんですか。
「たぶんズレてるんだと思います。私はそれに気づいてなくて、自分の気持ちいいところで感覚的に歌っていました。11月のライブで歌った時にバンドのメンバーに『何で歌えるの?』って聞かれたんですよ。『何の音を聴いて歌ってるの?』って『いや、何も聴いてないです』って」
――あはははは。何も気にしてないと。
「特に意識することもなく当たり前に歌っちゃってたので、本当は歌うのが難しいんだって言われて気づきました。私はもう『行ってしまえー!』って感じで歌っているので。逆に音楽的な知識がある方が白戸(佑輔)先生の曲は歌えないと思います(笑)」
――「あ〜〜〜〜!」っていうシャウトの部分も最高ですね。
「レコーディングの前に『ライブで盛り上がりそうな曲だからアカペラで叫んでみない?その後に転調させたいから』って言われて、頭の中はハテナマークだったんですけど(笑)。いざやってみたら、すごくカッコよくなって。この叫びはライブでも毎回、私の気分で長さや表現の仕方も変わると思うので今後も楽しんでもらえるんじゃないかと思います」
――直前になったら待ち構えちゃいそうです(笑)。
「はい、『来るぞ、来るぞ!』って思ってもらえたら(笑)」
――「FREEDOM〜Never End〜」はロックナンバーで気持ちいい声を響かせてくれていますが。ライブができない日々だったぶん、ライブを見据えてのレコーディングでもあったんですか。
「そうですね、『FREEDOM〜Never End〜』を最初に聴いた時に『絶対にライブで盛り上がる曲じゃん!』と思っていたこともあって。目の前にお客さんがいるような気持ちで歌ったので、その想いが伝わってるといいなと思います」
――今回は様々なジャンルの曲に挑戦しつつ、ロックな曲を歌いたいというのも、ひとつの想いとしてあったということですが。以前、JUNNAさんが「今はすごく声が出てるけど、いつまで出るかはわからないし」とポロッと言ってたのが印象に残っていて。こうしたロックな曲の中に思い切り今の自分の声を残したいという気持ちもありますか。
「そうですね。同じ声って二度と出ない気がしていて。2年前に出したアルバムの17歳の私の声は、今の私ではもう表現できない。どんどん変化して、進化していってるので、今の20歳の私の声を詰め込みたいと思いながら歌ってました。『FREEDOM〜Never End〜』は特にそんな曲になったなと思います」
――そして「波打ち際」は最果タヒさんの作詞で、こちらもすごく新鮮なコラボになりました。
「この曲は『最果タヒさんの詩を歌いたい』という想いから始まって。以前から、胸に刺さる独特な言葉の表現をされる方だなと思っていたので、ぜひご一緒してみたいですと、お願いしました。歌は、曲や声が全て組み合わさってひとつの物語が完成すると私は思っているんです。最果さんの歌詞をいただいたときに、これはすでにひとつの物語が完成していると思いましたし、『早く歌ってみたい!』と思いました。この歌詞が上がってから曲を多保(孝一)さんにお願いしました。」
――またSchroeder-Headzさんのアレンジも素晴らしいです。JUNNAさんの歌のアプローチも結構考えられたんじゃないですか。
「プリプロダクションの時は、全体的に力強い感じで歌って、サビでは裏声も使って歌ってみたりしたんです。いろいろと考えて、最終的には、その真ん中ぐらいで歌うのがちょうどいいんじゃないかなって自分の中で腑に落ちて。歌ってみたら『これだ!』って思いました。強さの中の優しさや、優しさの中の強さが表現できたんじゃないかなと感じています」
――一方「La Vie en rose」は大人っぽい雰囲気の曲ですが、どんな女性像をイメージしましたか。
「私よりもっと年上の、大人っぽいんですけどちょっと弱い部分や、ちょっとダメなところもあるような女性をイメージして歌いました。ここまで大人っぽい曲はこれまでになかったので、『La Vie enrose』も新鮮に聴いてもらえるんじゃないかなと思います」
――そして、一番最初にレコーディングして、今回のアルバムのラストを飾る「いま」ですが。まず、初めての作曲に挑戦してみようといういきさつはどういうものだったんですか。
「いつか作曲もしてみようとはずっと思っていたんです。でもすごく勇気がいることだし、一歩を踏み出さなきゃいけないと思っていて。コロナ禍の自粛期間中に心境の変化もあって、今なら、じっくりと作れるんじゃないかと思ったんです。歌いたい想いもたくさんあって、でも叶わない状況でみんなにどう伝えればいいかということを思いながらまず歌詞を先に書いてから作り始めました」
――その歌詞をピアノの譜面台に置いて?
「それからどうしようって、数時間、考えました(笑)。頭で考えてもできないので作るしかないと思い、AメロとBメロは先にコードを付けて、サビとDメロは歌いたいメロディが先に出てきたので、そこにコードを付けていった感じです」
――面白いですね。AメロとBメロのコードを付けたことでサビのメロディが自然に生まれた。
「そうだと思います。感覚的にサビのメロディが出てきて。歌詞は細かいところを直したりしたんですが、曲はすんなりOKが出たので嬉しかったです」
――独自の作曲法を習得しましたね。
「どうなんでしょう(笑)。私は初めての作曲で手一杯で、ピアノ1本で作って、そこから島田昌典さんにアレンジは完全にお任せします、っていう状況だったので出来上がってみて『こんな壮大な曲になるんだ…!』と感動しました」
――そして「いま」では〈私はここで歌うよ〉という歌詞にも決意が感じ取れます。
「はい。素直に気持ちをぶつけたいなと思いました。春の自粛期間中にスタッフさんたちとツアーをどうするかという話をしていて、私はやらない方がいいんじゃないかというのはずっと伝えていたんです。こんな状況でやっても誰かが悲しんでしまうんじゃないかと。そんな私の意見も尊重していただいて、延期になり、そこからまた中止になってしまったんですけど」
「そうですね。どうしたらいいのか、すごく考えました。歌うことが自分の全てですし、もちろんアーティストとしてツアーをやりたい気持ちはある。でも状況的に実現が難しくて、葛藤しながら決断をして。歌をみなさんに聴いてもらう機会が全くなくなってしまった時に、私はみんなに歌を届けたいって思ってるよっていう気持ちを伝えたいと思って、この歌詞を書きました。サビは私の気持ちをストレートに表現してて、AメロとBメロはみんなの気持ちも代弁したいし共感してもらいたいなと思っていました」
――私が「いま」を聴いて感じたのは、JUNNAさんの葛藤でも悔しさでもなく、「ありがとう」っていう感謝の気持ちでした。
「それはすごくありました。ライブやイベントができなくなってしまったことで、あらためてみんなに会えるのがすごく大切な時間だなって、気づくことができたので。20歳を迎えたことで、これまで色んな人に支えてもらってここまで来れたんだなとも思いましたし。大人になれたかどうかはわからないんですが、必死で周りを見る余裕もなかった時を経て、『あの頃は支えられてたんだな』と振り返られるようになってきました。そして曲の最後にはいつかまたみんなに会いたいという未来への気持ちを込めて〈私とここで歌おう〉と書きました」
――既にファンの方からの反響も届いてきてるかと思いますが、JUNNAさんにとって『20×20』はどんなアルバムになりましたか。
「1枚を通して楽しんでいただけるアルバムになったと思いますし、私の成長を見せられる作品になったと思います。既に聴いてくださった方が『成長してる!』とか『歌声が全然違う!』と言ってくださってすごく嬉しいです。そういう意味で、次の作品ではまたハードルが高くなると思うんですけど、これからも、これまでの自分を超えていけるようなアーティストでありたいなと思っています」
――来年2月には初のホールツアー「JUNNA ROCK YOU TOUR 2021 〜20×20〜」が開催されます。このツアーへの意気込みは?
「初めてのホールツアーなのでホールに合うライブの演出も考えながら、またステップアップしたステージを見せられたらいいなと思います。ホールで落ち着いた状態で皆さんに見ていただけると思いますので、ぜひ遊びに来てもらいたいです」
――これまでにもライブではギターを弾いたり、ダンスに挑戦したりと、楽しませてくれているJUNNAさんですが、このツアーではどんなことを考えていますか。
「今までは自分の好きなように歌って体を動かしてる感じだったんですけど、見せ方もより考えて新しいパフォーマンスを見せられたらと思っています。やりたいことは本当にたくさんあって、衣装をデザインするのも楽しいのでいつかやってみたいですし、引き続きグッズの制作にも携わっていきますので、そちらも楽しみにしていてください!」
Text by 上野三樹